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菖蒲(あやめ)も杜若(かきつばた)も区別がつかないぐらいよく似た美しい花で、選択に迷ってしまうことを「いずれをあやめ、かきつばた」などと言います。 平安時代の末期に源氏の大将、源頼政が朝廷の命をうけて、当時悩まし続けていたヌエ(怪しい鳥)という妖怪を退治したとき、ときの天皇はその褒美として頼政がかねてから恋をしていた女官の「あやめの前」を与えることにしました。 そのとき天皇は、10人あまり盛装した美女を召しだし、「あやめの前」を選び出すように仰せられました。 顔もスタイルも同じような美女ぞろいだったため、さすがの頼政も困り果てて、「五月雨(さみだれ)に 池の真薦(まこも)の 水増して いずれ菖蒲と 引きぞ煩う」と一句詠んだのです。 意味は、五月雨が降り続いて池の水かさが増したため、真薦も水中に隠れてどれが菖蒲かわからず、引き抜くのをためらっているという歌ですが、端的に言えば、美人ぞろいで検討がつきませんと白状したものです。 天皇もさすが歌の名人であると感服され、「あやめの前」をお下げ渡したということです。 |
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