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1 ○取りつく島がない⇔×取りつく暇がない 【例文】・・話のきっかけさえ作らせてもらえず、取りつく島がない。 相手が話を取り合おうとしない様子のことです。話しかけても冷たく刺々しい対応をされてしまう、そもそも話しかける隙すら見せてもらえない、そんな状態を言います。 ひとこと話す暇さえ与えてくれないという状態からの連想かも知れませんが、「取りつく暇」は間違いです。 「海上で辺りを見回しても、島影ひとつない状況」にたとえているとわかれば、正しく覚えられるでしょう。 ★ポイント 頼りにする手がかりがなく、途方に暮れる状態を表します。 2 ○伝家の宝刀⇔×天下の宝刀 【例文】・・ここまで追い込まれたら伝家の宝刀を抜くしかない。 一家に代々伝わっている名刀のことです。そこから転じて、いざというときにのみ使う奥の手のことを言います。 天下に伝わる刀、という解釈は誤りで、むしろそのような大々的にとられているものではなく、めったなことでは使われないとっておきの手段というイメージでしょう。 類語に「切り札」があり、「切り札を切る」のように使います。「切り札」とはトランプで強いカードのことを言います。 ★ポイント 「伝家」は家に代々伝わっているもののこと。「家伝」や「重代」ともいいます。 3 ○いやが上にも⇔×いやが応にも 【例文】・・ここまでお膳立てされたら、いやが上にも盛り上がる。 それに加えて、ますますという意味の言葉です。「いや」は漢字で「弥」と書き、これには「いよいよ」「ますます」という意味があります。「いやが上にも」は、ますますそれ以上、程度が甚だしくなるということを表しているのです。 「いやが応にも」という間違いは「いやが応でも」という言葉と交ざってしまった結果広まったと考えられます。ここでの「いや」は漢字で書くと「否」です。否(NO)であろうと応(YES)であろうと関係ない、「承知でも不承知でも」という意味です。 ★ポイント 「弥」を使った言葉には、ますます栄えるという意味の「弥栄(いやさか)」があります。 4 ○寝覚めが悪い⇔×目覚めが悪い 【例文】・・自分のせいで気分を害してしまったのだと思うと寝覚めが悪い。 自分が過去にやってしまった過ちなどを思い出して、後悔したり嫌な気分になったりすることをいいます。悪夢を見るなどして眠りから覚めたときの、気分の悪さにたとえているのです。 眠りから覚めることは「寝覚め」とも「目覚め」ともいいますが、目覚めのほうには別の用法があります。「勉強する意欲に目覚めた」「両親に目覚めた」など、今まで眠っていた目に見えないものが、はっきりと表に出たときに使う例が多いでしょう。 ★ポイント なんとなく後味が悪い気分のときに「寝覚めが悪い」を使います。 5 ○采配(さいはい)を振る⇔×采配を振るう 【例文】・・采配を振るリーダー次第で、チームの動きは大きく変わる。 陣頭に立って指揮や指図をすることをいいます。 「采配」とは戦場で大将が使った道具の一種です。柄の先に細く切った紙や動物の毛などで作られたふさがついており、これを振って兵士たちに指揮をしてしました。 采配を「振るう」という用例が増えているようですが、采配はあくまでも「振る」ものであり、多くの辞書は「振るう」を誤用しています。「振るう」には実力を発揮するという意味があるため、この誤用が広まったのかもしれません。 ★ポイント 「采配をとる」「采を振る」ともいいます。 6 ○論陣(ろんじん)を張る⇔×論戦(ろんせん)を張る 議論や弁論をする場面で、うまく筋道を立てて論を展開することをいいます。 「堂々とした態度で、専門家を相手に論陣を張る」というように、議論が巧みな様子を言い表せます。「論陣」は議論をするときの備えを戦場の陣立て(部隊配置)にたとえた言葉のため「陣を張る」と同じく「張る」という語を用います。 「論戦」は議論を戦わせることなので「論戦を繰り広げる」などとは言いますが「張る」とはいいません。 7 ○寸暇(すんか)を惜しんで⇔×寸暇を惜しまず ほんの少しの時間さえ惜しむことをいいます。「寸暇」とはわずかな暇のこと。 「資格試験合格のため、寸暇を惜しんで勉強する」というように使います。 「努力を惜しまず」などの言葉から連想された結果か、惜しむのではなく「惜しまず」と使う誤りが多い言葉です。 わずかな時間を惜しんで有効に使うのと、惜しまず無為に使ってしまうのでは、意味がまったくの逆になってしまいます。 8 ○押しも押されもせぬ⇔×押しも押されぬ 堂々としていて実力があり、立派な様子を表します。「押しも押されもせぬ大スター」というように使います。 「押しも押されぬ」と間違うことが多いようですが、これは「押すに押されぬ」という言葉と混同されているためと考えられます。「押すに押されぬ」は「押しも押されもせぬ」と似ていますが、びくともしない、れっきとしたという意味です。 9 ○うろ覚え⇔×うる覚え ある物事に対して、あやふやにしか覚えていないことをいいます、「それを言うなら、うる覚えなのでは?」思った方は、それこそ正にうろ覚えです。ありがちな誤用です。諸説うありますが、「うろ覚え」は空っぽな空間を意味する「うろ」が語源と考えられています。 うろ覚えの類語とに「空(そら)覚え」がありますが、こちらは「すっかり覚えていること」という反対の意味でも使います。 10 ○眉をひそめる⇔×眉をしかめる 心配事があったり不快を感じたときなどに眉間を寄せることをいいます。「ひそめる」はそれだけでも眉を寄せる様子を表す言葉です。 同様の言葉に「顔をしかめる」があります。これと混同して「眉をしかめる」という人が多いようですが、これは誤りとされています。 11 ○愛嬌(あいきょう)を振りまく⇔×愛想(あいそ)を振りまく 「愛嬌」は人から好かれる可愛らしさをいいます。「愛想」は好感の持てるような振る舞いをいいます。 「振りまく」のは「愛嬌」で、「愛想を振りまく」は間違っているとされることが多い用例です。 12 ○熱に浮かされる⇔×熱にうなされる 「浮かされる」は、熱によって意識がはっきりしなくなる様子の腰とです。 一方の「うなされる」は、悪夢などを見たせいで、寝ながら苦しげな声をあげることをいいます。熱には「浮かされる」のが正解です。 13 ○噛んで含めるように⇔×噛んで含むように 相手が理解できるよう、丁寧に言い聞かせることです。「噛んで含める」とは硬い食べ物を噛んで食べやすいようにしてから、子どもの口に入れることです。 14 ○二の舞を演じる⇔×二の舞を踏む 人の後に出てそのまねをすること。特に前の人と同じ失敗を繰り返してしまうことをいいます。 「二の舞」とは雅楽の舞のひとつで、『安摩(あま)』という舞の後に、安摩をわざと失敗しながらコミカルに演じるというもの。躊躇することを表す「二の足を踏む」と混同して、「二の舞を踏む」というのは本来は誤りですが、現在ではだいぶ一般化しているようです。 15 ○的を射る⇔×的を得る うまく要点をつかむことをいいます。的を弓矢でうまく射抜くことにたとえた言葉です。的を「得る」のは間違いとされています。的を射ると同様の意味を持つ言葉に「正鵠(せいこく)を得る」があり、こちらは「正鵠を得る」ともいいます。 16 ○汚名返上⇔×汚名挽回 悪い評判を返して、名誉を回復することです。「挽回」とは元の状態に戻すために、失われたものを取り戻すこと。諸説あり増すが、現代では「汚名挽回」は誤用とされています。 汚名返上の類語には「名誉挽回」があります。取り戻すのであれば、やはり汚名よりも名誉でしょう。 17 ○青田(あおた)買い⇔×青田刈り 収穫前のまだ田が青い段階で、収穫量を見積もって米を買うこと。そこから転じて、企業が優秀そうな学生を、早々と内定させることをいいます。「青田刈り」でも正しいとする説はありますが、本来は未熟な稲を刈り取るという意味です。 18 ○足をすくわれる⇔×足下(あしもと)をすくわれる 相手に隙をつかれて、失敗させられることをいいます。本来すくわれるのは「足」が正しく、「足下」は誤りとされていますが、最近は「足下をすくわれる」という誤った使い方が定着しつつあるようです。 19 ○雪辱(せつじょく)を果たす⇔雪辱を晴らす 「雪辱」とは「恥を雪(すす)ぐ」ことです。負けて辱めを受けた相手に勝ち、恥を除き去るということです。 「晴らす」は不快感を「取り去る」ということなので、「雪辱」の「雪ぐ」と意味が重なってしまいます。そのため誤用となります。 20 ○怒り心頭(しんとう)に発する⇔×怒り心頭に達する 激しく怒ることをいいます。「心頭」とは心の中のこと。「発する」は表れることです。「怒りが頂点に達する」という言い方の影響か、「達する」を使ってしまう用例がありますが誤りです。 21 ○上を下への大騒ぎ⇔×上や下への大騒ぎ 「上を下へ」とは、上にあるものが下になり、下にあるものが上になるということです。それだけ入り乱れて、混乱する様子を表した言葉です。「上や下へ」や「上へ下へ」などは誤りです。 |
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