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1 お手の物 ★意味・・得意とするもの。慣れていてたやすくできること。 【例文】・・一人暮らしが長いだけあって料理はお手の物だ。 得意なことを簡単に行えるさまを表します。相手が得意としてる物事を褒めるときや、自分の得意なことを自慢するときなどに使えます。 「手の物」とは「自分が持っているもの」や「自分の自由に扱えるもの」のことで、そこから転じた言葉と考えられます。 同様の言葉に「朝飯前」「お茶の子さいさい」があります。こちらはそれぞれ「朝食をとる前の空腹で時間がないときでも簡単にできること」「お茶菓子のように腹にたまらない、容易なこと」という意味です。 ★ポイント 自分が完全に手中に収めているから「お手の物」というわけです。 2 如何(いかん)ともしがたい ★意味・・どうしようもない。どう対処するのも困難。 「例文」・・やるべきことが多すぎて、如何ともしがたい状況だ。 有効な解決方法が見つからず、どうにもならないことを表しています。どうしても諦めざるを得ないときや、困難な状況を伝えるときなどに使えるでしょう。 「如何」とは物事のなりゆきやその状態を表す言葉。 たとえば、「事の如何によって」は、「物事のなりゆき次第で」という意味です。 「如何ともしがたい」と同様の意味の言葉には、「手の打ちようがない」「なすすべがない」などがあります。また、「如何せん」という言い回しがあり、「引越しをしたいが如何せんお金がない」などと使います。 ★ポイント 相手からの依頼を断る際にも使える表現です。 3 情けは人のためならず ★意味・・人への親切は、自分に良い報いとなって返ってくる。 【例文】・・情けは人のためならずというし、人助けはするべきだ。 人に親切にすることは人のためばかりでなく、巡りめぐって自分にもよい報いが返ってくるので人には親切にするべきである、という意味のことわざです。 しかし、「情けをむかけるのはその人のためにならないので、親切にするべきではない」という解釈をしてしまう人も少なくありません。ありがちな間違いですが、まったく反対の意味になってしまうので気をつけてください。 「人のためならず」は人のためにならないのではなく、「人のためだけではない」という意味だと覚えておきましょう。 ★ポイント 類語に「人は思うに身を思う」という言葉もあります。 4 虚仮威し(こけおどし) ★意味・・見かけばかりで中身がないこと。 【例文】・・虚仮威しの文句は怖くない。 「虚仮」は仏教の言葉で、内心と外見が一致していないこと、真実でないことを指します。「虚仮威し」は見え透いた威しで、他人を恐れさせようとすることを表しています。 人を馬鹿にすることを「こけにする」と言いますが、この「こけ」も虚仮と書きます。見た目だけで中身が伴っていないと、相手を侮っているわけです。 また、「虚仮」には行いの愚かさを表す意味もあり、むやみにものを惜しがることを「虚仮惜しみ」と言います。 ★ポイント 「虚仮威かし」という言い方もします。 5 造詣(ぞうけい) 意味・・ある分野について深い知識やすぐれた技術があること。 【例文】・・彼女は現代美術だけでなく、浮世絵にも造詣が深い。 「造詣が深い」などといい。特に芸術や学問について詳しい場合に使います。 「造」には何かを造るという意味のほかに、極めるという意味もあります。「詣」は「詣でる」のようにお寺や神社に栽培する場合に使うほか、高い場所に行き着くという意味も持っています。この二つの文字を組み合わせて、道を究めた達人を表しているというわけです。 学問や芸術以外の分野に通じている場合には、「精通していめ」と言い表すと良いでしょう。 ★ポイント 物事をすみずみまで知っていることを「通暁(つうぎょう)」や「知悉(ちしつ)」といいます。 6 僭越(せんえつ)ながら ★意味・・立場をわきまえず差し出がましいのですが。 【例文】・・僭越ながら、私よりお祝いを申し上げます。 行動をする前や、考えを表明する前に使う言葉で、謙遜の意味があります。「僭越」とは立場をわきまえず、出すぎたまねをすることです。 スピーチの前文句としてよく使われるほど、会議の席で意見する際にも使いやすい表現です。 便利な言葉ですが、使い方には気をつけてください。相応の地位や肩書きを持っている人が「僭越ながら・・」といった場合は、聞き手に対して嫌味な印象を与えてしまいかねません。 ★ポイント 「僭越ではございますが」という言い方もできます。 7 おざなり ★意味・・いい加減に済ませること。 【例文】・・おざなりな対応をすると、後で困るのは自分自身だよ。 その場限りのいい加減な対応をすることです。「お座敷の形(なり)が略された言葉で、江戸時代に宴会の席で形だけ取り繕った言動をするさまを言い表したのが語源とされています。 これと混同しやすい言葉に「なおざり」がありますが、こちらは「何もしないで放っておく」という意味の言葉です。 「おざなりな返事をする」はいい加減でも返事はしています。一方、「返事をなおざりにする」は返事をしていないことになるのです。 ★ポイント いい加減な対応が意識的なら「おざなり」、無意識なら「なおざり」という区別も。 8 粗相(そそう) 不注意から起きてしまった失敗のこと。特に行儀や作法を間違ってしまった場合に使うことが多い言葉です。「とんだ粗相をしてしまい、申し訳ございません」といった使い方をします。 取り返しがつかないような、重大な失敗に対して使うケースはほとんどありません。 また、大小便を漏らしてしまったときにも使い、「飼い犬が粗相をしてしまった」などと言います。 9 眼福(がんぷく) 楽しいものや珍しいもの、貴重なものを見て、幸せに感じることを表します。たとえば、すばらしい芸術作品を目にした際に「眼福にあずかった」などと表現できます。 類似の表現に「目の保養」や「目正月」という言葉があります。よいものを目にすることを、目を休ませて健康を保つことや、1年でもっとも楽しくめでたい時期にたとえた表現です。 10 板につく 「入社から3年経ち、ようやく仕事が板についてきた」という具合に、経歴を積んだ動作や態度が、職業や地位に見合うようになったときに使います。くた、服装がよく似合っている様子も表します。 ここでいう「板」とは舞台のことで、元々は経験を積んだ役者の芸が舞台にうまく調和している様子を表す言葉です。 なお、この言葉は目上の人に対しては使いません。 11 門外漢(もんがいかん) その道について詳しくない人や、その道とは関係のない人のこと。たとえば、「クラシック音楽についてはまったく門外漢だ」といえば、クラシック音楽に知識がないことがわかります。 「門外」は専門の外、「漢」は男性を表す言葉ですが、「門外漢」は女性にも使えます。 類語に「畑違い」「素人」などがあります。 12 河岸(かし)を変える 飲食や遊びの場所を変えること。お酒を飲んでいて2軒目、3軒目に場所を移したいときに「そろそろ河岸を変えよう」などと使います。 「河岸」は文字通り川の岸のことで、積み荷を揚げ下ろしをしたり、人が乗り降りたりする船着場を意味しています。そこから転じて、船着場の近くにあった魚市場、そして遊女屋を指すようになりました。 昔ながら文化が、そのまま現代に残った言葉なのです。 13 時(とき)を分かたず 時間を問わず、いつでもという意味。「時分かず」という「季節の別なく」という意味の古語が元になっています。 たとえば「事件のあった場所には、時を分かたず警備が敷かれた」という場合、「事件後はいつも警備が敷かれている」という意味です。 しかし、誤って「すぐに」という意味だと解釈してしまう人が少なくありません。「事件後すぐに警備が敷かれた」という意味ではないので注意してください。 14 諌(いさ)める 間違った行いや悪い点を指摘して、改めるように忠告することです。忠告する相手は誰でもいいというわけではなく、「家臣たちは口々に国王を諌めた」というように、主に目上の人に対して忠告するときに使います。「諫言かる」ともいいます。 なお、目下の人に対して注意したり反省を促したりする場合は、「窘(たしな)める」という言葉を使います。 15 底が割れる 嘘や隠しておきたいことが、相手に見破れてしまったことをいいます。「どんなに実力をごまかしてもすぐに底が割れる」といった使い方をします。 「底」にはものの一番下という意味のほか、そのものが持つ真の実力、力量という意味もあります。 そして「割れる」は、「身元が割れる」のように隠されていたものが明らかになるという意味を持っています。 16 滋味(じみ) 栄養のある食べ物やその味わいについて表現する言葉です。「滋味深い料理」といえば、健康によくおいしい料理のことです。 また、深い味わいを感じるもの全般を指すこともあります。たとえば「滋味豊かな作品」とは趣のある芸術作品というような意味です。 体の栄養となることを「滋養」というように、「滋」には栄養になる。うるおすという意味があります。 17 幾分(いくぶん) 分割されたものの一部分やね程度が小さいさまを表します。前者の場合は「利益の内、幾分かを寄付する」というように、後者の場合は「薬を飲んだら幾分体調がよくなった」というように使います。 「幾」は数量が決まっていないこと、わからないことを意味しており、あまり多くない数量を表す類語に「幾らか」があります。また、「幾ばくもない」という言葉は、時間、日数がわずかしかないことを表します。 18 不躾(ぶしつけ) 失礼なこと、作法がなっていないことを表します。 多くの場合、「不躾なお願いですが・・・」というように前置きとして使います。相手に急な依頼をする場合や聞きにくい質問をする場合などに、相手に対して失礼な言動かもしれないと、へりくだっているのです。 便利な言葉ですが、あまり乱用できるものではありませんし、お願いの内容によっては本当に失礼になってしまうことも・・・。節度はきちんと守りましょう。 19 老婆心(ろうばしん) 必要以上に世話を焼きたがる、親切心を表す言葉です。相手にどうしてもアドバイスをしたいときなど、「老婆心ながら言わせてもらうと・・」のように言い添えます。文字通り、年をとった女性にありがちな(ともすればお節介な)世話焼きの気持ちが由来です。 あくまでも芸権あふれる人が目下の人に忠告する際に使う言葉で、目上の人を相手に使うと失礼になってしまいます。 20 三味線を弾く(しゃみせんをひく) 自分の利益のために適当なことを言って相手を惑わせること。人の話に調子を合わせてごまかすという意味もあります。特に勝負事のときに言うハッタリを指し、「口三味線(くちじゃみせん)」とも言います。 歌の伴奏として三味線を弾くときは、歌と「調子を合わせる」ことから、相手の話に調子を合わせて適当なことを言うという意味になり、さらに嘘をついて相手を騙すことを指すようになったと考えられています。 21 病膏肓(やまいこうこう)に入る 病気が進行して、手の施しようがないこと。そこから転じて、趣味に熱中しすぎてしまい、後戻りができないことをいいます。 「膏肓」とは体の奥深くのことです。中国の故事に、晋の君主である景公の膏肓に病気が入った結果、治療ができなくなって病死してしまったというものがあります。これが「病膏肓に入る」の由来です。 この句の場合、「入る」は「はいる」とは読みません。 22 雨脚(あまあし)が弱まる 雨の降る勢いが弱まり、小降りになること。「雨脚」とは雨が線のように降り注いだり、降りながら通り過ぎたりする様子のことです。 「雨が止む」と混同してしまい、「雨脚が止む」と表現しているケースが見受けられますが、これは誤りなので注意。 23 甘露(かんろ) 飲み物などの味が甘くておいしいこと。古代中国の伝承に登場する、天から降る甘い液体が語源です。 料理の「甘露煮」のように、甘い味のものをたとえて使うこともあります。 24 馥郁(ふくいく) 良い香りが漂っている様子を表す言葉で、「馥郁とした花の香り」というように使います。 類語に「匂やか」「匂いやか」という表現があります。 |
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